生産の現場から
vol.32 クエタマ種苗の生産中
2025.07.15
近畿大学水産養殖種苗センターにおいてクエタマの生産は6月上旬に行います。
クエタマは、クエのメスと、同じハタ科魚類で成長の良い南方系の品種「タマカイ」のオスとを交配させた交雑魚です。
現在開催されている大阪・関西万博2025では、その1歳魚を展示しています。
※近畿大学は大阪・関西万博において交雑魚を「サラブレッド魚」という造語で展示および料理の提供をしています
今年は6月4日に人工ふ化を行いました。写真は6月5日のふ化直後の仔魚の様子です。
魚は魚種ごとの特性によって、養殖するうえでさまざまな課題があります。
クエは非常に美味な魚ですが、成長が非常に遅いことが大きな課題で、出荷まで長期間の飼育を要します。
私たちはその課題解決にさまざまなアプローチで取り組んできました。
その一つの方法として、温暖な鹿児島県奄美大島の海域で養成するなどして成長速度の遅さを補ってきました。
2011年にはこのクエの成長改善を目的としてタマカイとの交雑魚の作出に成功。
クエのおよそ2倍の速さで成長し、食味も身質も良好で高い評価を受けています。
一方で課題もあり、同じハタ科魚類で近縁とはいえ、異種間の交配になるので相性によっては受精率が低い、ふ化率が低い場合があります。
クエタマは陸上養殖の対象魚種として注目を集めており、これらの課題をクリアして安定した生産・種苗供給ができるよう技術開発を進めています。